マネジメントの密度を高める (エス・エム・エス Advent Calendar 2023)

Atsushi Sakai
11 min readDec 4, 2023

こんにちは。

です。仕事ばっかりしていたら、あっというまにこんな季節になりました。楽しい日々を過ごしていますけど、一年が早くて困っちゃいますね。今回もマネジメントについて、色々と書いていきます。

ちなみに、こちらの記事は、株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2023 5日目 (12/5) の記事となります。

whoami

このブログは自分自身のものなので、あまり書かなくても良いと思いつつ、Advent Calendar として初めて読んでもらえる機会もそれなりにある(あってほしい!)と思うので、改めて whoami しておきます。

私は現在、株式会社エス・エム・エス という会社で「カイポケ」という SaaS のプロダクトの開発組織でエンジニアリングマネージャーをやっています。現職には 2022年の10月に入社しています。前職では「家族アルバム みてね」を作ったり、技術組織の責任者をしたりしていました。

ここ半年くらいはデザイン組織のマネジメントにもチャレンジしており、エス・エム・エスにおけるデザイン価値を社内外に広げたり、採用にも注力しています。

「マネジメントの密度」

今日は「マネジメントの密度」について書こうと思います。これは、自分が勝手に使っている表現ではあるのですが、ここ一年程自分の中でテーマになっているキーワードです。

ここで「マネジメントの密度」と呼んでいるもの、特に「マネジメントの密度が高い状態」は一体どういうものか。簡単に言語化すると、組織について多くの人が活発に議論しており、その結果、マネジメントの各種方法論で多くの問題が発見され解決に向けて試行錯誤している状態、また、ロールとしてのマネージャーだけではなくそれ以外のメンバーも同時にそういった状態になっていること、と自身の中で定義づけています。

ロールとしてのマネージャーだけではなくそれ以外のメンバーも同時にそういった状態になっていること」はかなり重要視していて、単に組織内にマネージャーを増やすことで密度の高い状態を実現するのではなく、いかに組織全体としてマネジメントの重要性やそれによって解決できる問題が存在していることなどを認識し、さまざまなソリューションを自らボトムアップに生み出していけるか、というところを考え続けています。もちろん、マネージャーをその実行者として増やすことは重要ではあって、それはそうなのですが、同時に非マネージャーがマネジメントの方法論を知る機会を増やしていきなながら、むしろマネージャーに対して組織の課題を提言できるような状態を私は目指しています。「これがうまくいかないのは体制の問題じゃないですか?」とか「見ているタイムスパンが短期的すぎません?」とか、どんどんマネージャーにツッコミを入れてもらいたいと思っています。

さて、今日はこの「マネジメントの密度を高くする」という目的のために、私が社内でやっていることをいくつか TIPS として紹介してみようと思います。TIPS といってもどこの会社でも汎用的に使えるものではないかもしれません。あくまでも「こういうやり方もあるよな、でもウチはこうやろう」くらいの気持ちでご覧ください。

“EMのための” Working Out Loud チャンネル

すでにとても有名な ohbarye さんによる Working Out Loud 大声作業(しなさい)というコンセプトの流用ですが、これをエンジニアリングマネージャーの間にも適用させたくて、最近 Slack で #kaipoke-em-working というチャンネルを誕生させました。これは、以下のような狙いです。

EM が組織に対して実行していく様々な提案には、多くのコンテキストが失われていることがあります。それは、単に EM とメンバーで普段見ている目線が違うことで起こります。基本的に長期視点で組織を見つめる EM と、そういう目線を持ちにくいメンバー(単純にそういうカテゴライズも良くはないですけどね)の間では、圧倒的に情報量が違うのです。これが原因で大きな組織的チャレンジを足踏みしてしまったり、時にはハレーションが起きてしまったりすることもあるかもしれません。

このような状況に対して何かできないか?と思った時に、「生煮えの思考プロセス」も全部公開して、EM がどういう問題を捉えているか、その中から何を課題定義してソリューションに導こうとしているのか、ということをリアルタイムに伝えることができると良いだろうな、なんならリアルタイムにフィードバックももらえたらいいじゃんと考え、開発メンバーがやっているような「Working Out Loud 大声作業(しなさい)」の手法を取り入れちゃおうと思いました。

あとは、単に EM が向き合っている問題がメンバーとは結構違うので、孤独を感じやすいというのもよくあることだと思います。EM は自分自身の広い・強い影響力を考えてしまい、発信する場を持たず、一人で黙々と問題に向き合っている、みたいな状況も見たことがあります。こういう問題への対策という観点もあり、 #kaipoke-em-working チャンネルを誕生させました。

実際、このチャンネルが誕生して以降、EM の人たちのパブリックな発信が増えていたり、EM 同士の会話によって問題解決が促されているのがみて取れ、各所でこのチャンネルの存在を喜んでくれています。

もちろん、EM だけでなく、このチャンネルに join しているメンバーからも良い反応があったりします。

同じような問題意識のある方は、ぜひ身近な EM と Working Out Loud をしてみてはいかがでしょうか。

読書感想スレ (Slack)

これは、結構単純な話なんですが、読んでいる書籍の感想を自身の #times チャンネルにスレッド形式でつぶやき続けるというものです。感想をしっかりドキュメントツールにまとめるような大袈裟な手法ではなく、Kindle の引用機能を用いて一節を引っ張りつつ、それに対して一言だけ加えて Slack のスレッドにコメントし続けていくというだけなので、とてつもなく楽な行為です。

私のマネジメントスタイルは、基本的には実践・行動からの学びを重視しており、そこからのPDCAで学んできていますが、一方で、根本的な価値観やプラクティスについては、多くの書籍からのインプットがあり、それが行動原理になっていることがほとんどです。マネージャーが、どんな書籍を読んでいて、そこからどんな知識を得ようとしているのか、どんな問題意識を持っているのかなど、周囲は興味を持ちやすいものだと思います。

スレッドに感想をつぶやき続けていると、時々議論が盛り上がったり、「これ読んでみよう」というリアクションが発生していたりするので、決して大きな影響力では無いかもしれないですが、身近な人たちに自分の視点をシェアできる良い TIPS だと思います。

公開 1on1

弊社は、1on1 文化が定着しており、メンバーとマネージャーの間のコミュニケーションが活発に行われています。そういう文化の中で、1on1 という手法そのものについての知識をシェアする機会を作っていくことも重要です。

マネージャーが 1on1 のスキルを上げるための手法としては、専門のトレーニングを受けることだったり、書籍でのインプットというのももちろんあります。ただ、それらに記載されているメソッドやプラクティスは、ややハードルの高さと堅苦しさを感じるものだったりして、上手く自分のスキルにしきれない人もいるかもしれません。また、 メンバー側の視点も重要で「1on1 という場をどう使えば良いのか」という疑問を持つ人も多いはずです。ただ、こちらの視点について書かれている書籍はあまりなく(知らないだけかもですが)、1on1 というイベントがマネージャー側のスキルにかなり依存してしまっているという問題意識があります。

そこで、私がやっているのは「自分の 1on1 をそのまま社内に公開してしまおう」というややエクストリームな手法です。特定の日時に 1on1 を実施することを public な Slack チャンネルに公表し、Google meet で行われるオンラインの 1on1 をリアルタイムにそのまま公開します(同じURLに誰でも入っても良い状態)。公開1on1 の場では、特に飾り気もなく、始まったら突然いつも通りの1on1を開始し、最近の悩み事などを語り合ったり壁打ちをしていきます。

ただ、流石に何でもかんでも公開するわけではなく、基本は「マネージャー同士の1on1であること」また「この方法を取ること・事前に公開することをお互いに合意すること」としています。

多くのマネージャーは、これまで数多くの 1on1 を経験している中でメンバーに対して「1on1をされる側」としてどういうマインドで向き合って欲しいか、という思いが少なからずあるはずです。それを単純に言語化するだけではなく、周囲に「1on1 の場をこう使ってみてほしい」ということをサンプルとしてそのまま表現できれば、と考えてます。

また、単純にマネージャーがどんな悩みを持っているのか?ということ自体がコンテンツにもなるので、閲覧側としても面白がってくれると良いなと思って、公開 1on1 を実施しています。

マネジメントの密度を高めることの狙い

ここまで「マネジメントの密度を高める」というキーワードのもとに、私が取り組んできたいくつかの小さなTIPSをまとめてみました。

「マネジメントの密度を高める」ことの狙いは、ラフな書き方をすると「社内の人々がマネジメントに触れる機会を増やす」ということかもしれません。私は「マネジメント」というのは、マネージャーだけの特別な仕事ではなく、組織に属する個人が、問題解決のプロセスの中で様々な粒度で持っておくべきスキルだと考えています。また、マネジメントに触れる機会が増えることで、組織的なチャレンジを促進したり、PDCAのサイクルが回しやすくなったりもするかもしれません。

さらに、こういった機会を提供し続けることで、マネジメントに興味を持つ人が増え、様々な観点や経験を持ったマネージャーが組織内に増えていって欲しいという期待もあります。触れる機会を増やしていく中でその本当の面白さや難しさ、問題解決できた時の喜びなどが共有できると嬉しいです。みんなでマネジメントに触れ、考え、組織全体で専門性を高めていけるときっと強い組織になれると信じています。

さいごに

典型的な締めの言葉になってしまいますが、エス・エム・エスではエンジニアリングマネージャーはもちろん、そのほか様々な職種のプロダクト開発に関わるメンバーを募集しています。

興味を持っていただいた方、転職をすぐに考えてはいないけど話を聞いてみたい、議論してみたい、といった方でも構いません。時間も15分でも2時間でも大丈夫です。カジュアル面談のお申込みはお気軽に以下よりお願いいたします。

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