39歳EMの転職活動の現実

Atsushi Sakai
Dec 2, 2022

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こんにちは。 Atsushi Sakai です。久しぶりにブログを書きます。

近況など

2022年9月いっぱいで、10年11ヶ月勤めた株式会社ミクシィ(現MIXI)を退職し、2022年10月1日から株式会社エス・エム・エスで働き始めています。

今日は Engineering Manager (以下 EM)として転職活動を行った経緯を書いていこうと思います。EM の転職活動について詳しく外部発信している人はいないのでは?ということや、EMってキャリアについての悩みは割と多めなのでは?と感じることもあり、読んでいただいた方にとって参考になればと思います。

とはいえ、転職を考えている・いないに関わらず、ひとりのEMがどんなことを考えながら転職活動をしてきたか、その経緯をお楽しみいただければ幸いです。

ちなみに、この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2022 3日目の記事です。

自身の経歴

筆者の経歴を書いてみます。

ざっくりいうと前職ではソフトウェアエンジニア → EM という経歴です。Web やモバイルアプリの toC サービスでのプロダクト開発と、その組織でのマネジメントの経験を積んできました。

技術スタックとしては、どれが得意かと聞かれれば、バックエンドのアプリケーションレイヤーです。モバイルネイティブアプリの開発も数年間がっつりやってフロントの機能開発・アーキテクチャ設計・パフォーマンス改善などを経験しました。直近はバックエンドに戻りつつ、自身の興味がクラウド前提のインフラストラクチャーに近いところに移っており、そういうものを扱うチーム (SRE) にも身を寄せていたという感じです。

技術的な活動と同時に、ここ5年半ほどは所属組織のスケールが進んでいく中で EMとしての活動幅が広がっていき、ピープルマネジメントと組織マネジメントや採用に費やす時間が徐々に増えていき、直近2年ぐらいはマネジメント業務が 100% になっていきました。

大きな企業に所属はしていましたが、ソフトウェアエンジニアとして新規事業の 0 → 1 を経験し、幸いなことに事業をかなり大きな規模までグロースさせることができたのは特徴的なところかもしれません。

あと、ここは大事なところですが、EMになったきっかけは、マネージャーが必要になった当時、チーム内に他に指向している人が特にいなかった、また、社会人経験も一番長いし「まぁやってみるか」というノリで引き受けたところからです。EMとしての出発地点は、まぁ、そんな感じです。

転職理由

早速ですが、今回、転職をしようと考えた理由についてです。整理するとふたつありました。

1. EM としてのキャリア形成

転職活動を意識し始めたきっかけは「EMとしてこのあと何ができるようになりたいか?」を考え始めたことです。日々の仕事をしていく中でもちろん色々なチャレンジはしていたものの、ひとつのプロダクトに8年以上コミットし続けるというとても長いマラソンのような環境で仕事をしていたこともあり、自分自身がこの先にどのようなキャリアを形成していくことができるのかをイメージしにくくなっていたことに、ふと不安を持った瞬間がありました。特に何か大きなきっかけがあったわけではありません。ある日突然「あれ?この先に何があるんだろう?」と本当にふと感じたのです。

そして、一度立ち止まってじーっと考えてみて、改めて自分自身にはこれからいくつかやってみたいことがあるかもしれない、といくつかの選択肢を整理していきました。

  • これまでのプロダクト開発の経験を活かし、ソフトウェアエンジニアとしてもう一度 0 → 1 が出来る環境に飛び込み、頑張ってグロースさせ、必要なタイミングでマネジメントに役割を転換させる
  • 現職(当時)と同程度のフェーズの別の興味あるプロダクト開発組織で、ここまで培ったマネジメント経験に再現性があるのかを試してみたい
  • 携わるプロダクトや事業はあとで考えるとして、現職(当時)よりも大きな規模の「組織マネジメント」を経験し、全く新たなスキルを身につける

もちろん、当時の企業に在職したままでも色々なチャレンジができるだろうなと考えていましたが、一度長く根付いてしまった環境では、悪い意味での慣れや甘えが出てきてしまう懸念もあり、あえて今の環境を飛び出して再学習やアンラーニングしたりしながら、新しい経験を積んでより大きな仕事に取り組むチャレンジをしてみることも、長い目で見て自分自身のキャリアにとっては必要なことだろう、と考えるようになっていきました。

2. 貢献したいと思う事業分野の変化

もうひとつの理由として、こちらは個人的な内面の変化です。

ここ1~2年で、仕事としてどのような事業に携わっていたいか、という想いにも変化がありました。コロナ禍の影響はとても大きかったと思います。コロナが流行る直前に子どもが産まれ、その後コロナ禍で 2~3 年を家族と密着して過ごしているうちに意識が変わってきていました。

それは、SNS やニュース、身近な人間関係構築を通して社会の動きを見聞きしている中で、自分が生きている「社会」に対して徐々に不安が増してきているということを現実感をもって感じられるようになってきていました。我が子が成人して生きていく20年〜30年後の日本社会の様子をあまり楽観視できない、というような感覚です。

少し前までは「テクノロジーで生活や遊びの価値観が変わったら面白いのに」という思いで仕事と向き合うことが多かったのですが、こういった心境の変化から現実的な社会課題に向き合いながら、少しでも我が子の世代が生きやすい社会を作りたい、そういう課題解決をしようとしている事業に携わりたいと思うようになっていました。

主にこれらの理由が転職を考え始める理由でした。ふたつ目の理由はとても個人的なものではありましたが、ひとつ目の理由は共感するEMの方は多いのではないでしょうか。

転職活動のツール

初めはリファラルで友人・知人に協力してもらいながら、色々な企業にアクセスさせてもらっていたのですが、同時に良い機会だと思い、色々なツールも使ってみていました。

その中で主な活動の場となっていったのは、 YOUTRUST でした。気軽な気持ちで転職ステータスを変えたのですが、メッセージがバンバン飛んできてしまい捌ききれない不安から、慌ててステータスをすぐに戻したりなどしていました。そのステータスが変わった一瞬を見て声をかけてくださった企業もありました。

YOUTRUST は今をときめくキャリアサービス、やはりリクルータのみなさんがとてもアクティブに動いているのを感じることができました。最終的に転職先として選んだ企業との出会いのきっかけも YOUTRUST のスカウトでした。

企業選び

転職理由に「EM としてのキャリア形成」と書きはしましたが、最初は EM として転職先を探しているわけでもありませんでした。このまま EM というキャリアを深めていくのか、もう一度 ソフトウェアエンジニア(IC)として難題に立ち向かえる場所を探していくのかは、正直言って「どちらでも良いな」と思っていました。重視していたのはどちらかというと事業内容で、貢献したいと思えるような課題解決をしている企業か、ということが先行しており、その上でソフトウェアエンジニアとしての役割が必要であればやるし、EM が必要であればやる、という感覚でした。

しかし、数多くのカジュアル面談を通じて様々な企業の状況を聞いていくと共通して「マネジメント」には大小あれど様々な課題を抱えており、EMというロールの必要性を語っている企業が非常に多かったのです。

面談を繰り返すうちに、自分のこれまでの経験は人材市場で実はとても価値を高く評価してくれるのかもしれないと感じるようになりました。また、EMとしてこれまで経験したことのない解決すべき課題がゴロゴロ転がっている、ということにも気付かされました。それを感じた後からは、一貫して明確に「EM としての転職先」を探すようになりました。

積極的な情報収集をしたことで、自分がどのようなキャリアを積んでこれたのかを改めて振り返ることになり、とても良い機会だったと思います。

選考に進むまで

最終的には 20 社くらいのカジュアル面談を長い時間をかけて継続的に行いました。

いろいろな企業とコミュニケーションするたびに、スプレッドシートに事業内容の要約や面談後の感想などを整理しつつ、自分自身がその時点でどのくらい興味を持っているかを相対的にポイントをつけて比較していきました。

ただ、相対ポイントによる興味度がその時点で低かったとしても、その時点でフィルターすることはせず、追加で企業調査をして情報を更新したり、複数回面談を行わせてもらったりしながら、興味度を何度も何度もアップデートしながら、自分の中で納得いくまで選考に進むかどうかの検討を進めていきました。

選考

長い検討期間を取りながら、最終的には興味度が相対的に高くまとまった企業のうち、6社の選考に進ませてもらいました。(5社に絞っていたのですが、最後の最後で、興味を捨てきれなかった企業に1社だけ急ぎで選考してもらったりしました)

選考は主に終業後 19時以降の時間を使って対応してもらいました。これはEMならでは、だと思うのですが、日中はミーティングが多かったり、在職中の組織の採用面接などの対応が朝や夜にあったりして、時間調整が割とハードでした。

子育てにも影響があるので家族と時間調整をしてもらったり、なにより企業側に遅い時間でも柔軟に対応してもらえたので、ここは本当に色々な方に感謝しています。

在職しながら並行で6社の選考を進めるのは本当に大変で、今振り返ると正直もっと絞り込んだほうがよかったとやや反省しています。が、本気で全ての企業に入りたいと思っていたので苦ではなく、むしろ楽しみながらやっていました。

すべての企業の選考にかかった期間は、おおよそ3ヶ月くらいだったと思います。

内定承諾

選考の結果、いくつかの企業から内定をもらい、承諾先を選ぶフェーズになりました。ここが本当に大変な意思決定作業でした。

オファー面談で得られた情報をもとに、内定をもらえた企業で自分がどのようなバリューを発揮できるか、自分の経験がその企業にとってレバレッジを効かせられるのか、また成長できるチャレンジがあるか、などを想像してドキュメントに言語化していきました。

そういった思考の結果、最終的には、

  • 貢献したい事業であること
  • マネージャーとして、これまでの経験よりも「規模の大きな組織」の課題に取り組むことができること

このふたつを軸として、承諾先の意思決定をしました。

自分にとってはスタートアップ期の組織を成長期まで持ってくることは経験することができたと感じていたので、ここから先は、すでに一度成熟した組織をさらに大きな成果を出せる組織に持ち上げるための組織マネジメントをやってみたい、そこで影響を出せるスキルを身につけたい、というのが自分にとっての新しいチャレンジだと結論を出しました。

転職活動から得られたもの

こうして今、自分は 株式会社エス・エム・エス で EM として日々いろいろな課題と向き合い、楽しみながらチャレンジすることができています。いままで全くやったことのないことにも手を出し始めています。

今回、転職活動をしてみて得られたことがたくさんあります。

一番大きかったのは、EMとして経験したことは、成功も失敗も含めて全て、人材市場においてはとても価値のあることだったと実感できたことです。カジュアル面談を通じてそういう実感があったからこそ、一念発起して新しくチャレンジする道に踏み出すことができました。転職する・しないは別として、いまキャリアに悩まれている EM の皆さんはまずは自分自身を客観視するために色々な会社と話をしてみるのが良いと思います

また、 EMというポジションについても各社で色々試行錯誤していることを知りました。企業によっては「EMが必要なのはわかっているんだけど役割が定まっていない…」という企業もまだまだたくさんあります。スタートアップだからマネジメントはまだ要らないよね、という考え方ももちろんありますが、そうでない企業も沢山あります。色々なフェーズで、今 EM が求められていることを身をもって理解することができました。

「39歳EMの転職活動の現実」としては以上になります。「39歳」はあんまり関係なかったですね。実際、年齢のことを気にして転職活動は全くしませんでした。

少しぼやかして書いているところもありますので、もっと詳しい話を聞きたい方は気軽に Twitter に DMでもしてみて下さい。雑談しましょう。

この記事が、いまキャリアに悩まれていたり、より成長できる環境に身をおきたいと考えている EM のみなさんの背中を押すことができたら幸いです!

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