話しかけられやすいコミュニケーションを目指す
連休中、Twitter のブックマークを遡って、これを読んでいた。とても共感する。
「話しかけにくい」とは一体何か。なぜそう評されるのかを自分なりにも考えてみた。
自分もかなり昔に一部の人から「話しかけにくい」と評されたことがあり、気にしていたことがあった。その時に意識して訓練したのは、話し方だった。
- 常にちょっと笑顔で相手と話す
- 相手の意見に対してなんでもいいので一回褒める
- 相槌を多めにする
- 声をちょっとだけ高くして喋る
これはまさに訓練が必要で、最初はできなかったけど、徐々に意識せずにできるようになっていった。リモートワーク主体のビデオ会議コミュニケーションだったり、テキストコミュニケーションでも基本上記のようなことは実践している。
ただし、これらは人間としてのUIのあり方でしかないので、もう少し深ぼって「話しかけられやすいコミュニケーションの取り方」について考えてみる。
なぜ話しかけられにくいのか
話しかけられにくい人は、以下のような感情を相手に抱かせているのではないだろうか。
- 何を言っているのか理解できない
- 何を言っているのか理解はできるが、なぜそれをいま伝えるのか、なぜそんな伝え方をするのかが理解できない
前者の場合は、情報を受け取る側が知識が追いついておらず、理解するのが難しくて本当にわからない状態になっていたり、はたまた、伝える側が情報を省略しすぎてコンテキストが不足してしまって受け取り側が理解できない状態になっていたりする。
一方、後者の場合は、情報自体は理解できるのだが、前提や背景が不足してしまっているため重要度や緊急度への理解が対話相手同士で一致せず、たとえば「もしかしてこの人怒っている?なんか怖い」といった感情にアクセスしてしまうことがある。本当はただ淡々と重要な情報を迅速にやりとりしたい状況なだけなのに。
で、こういうコミュニケーション上の不具合みたいなのは、レイヤーを越えたり、ロールを越えたり、チームやコミュニティを越えた時など自然に理解しあえる関係性でない場面で発生しがちである。理解できないことをたくさん言われると、劣等感を覚えたり、防衛的になってしまったりするのが人間である。
言葉の限界
これを考えていくと言葉には限界があることもわかる。特に単なる会話の中での言葉だけでは全てを表現できるわけはなく、前提として必ず情報不足が発生している。また、人によって投げかけられた言葉に対しての理解の差が生まれたり、人によって勝手に補足が入ることもある。
それは、まるで解像度の低い画像のようなもので、何かを表しているようで実態はよくわからないし全体を捉えられても詳細がわからない状態に似ている。人は勝手に情報を都合良く( or 悪く)補足して理解しようとしてしまう。
一方で言葉の情報不足を埋めることができる情報もある。それは、たとえば補足するドキュメントだったり、前提となる知識を相手に持ってもらうことだったり、さらに会話する時の身振り手振りや表情、声のトーンなども重要な要素である。その他にも色々ありそうだ。
言葉の限界を越えるために
私は補足する言語化された説明は、あればあるほど良いと思っている。伝えたいことの背景はもちろん、今どういう感情でこれを伝えているのか、なぜ今伝える必要があるのか、などをできるだけ多く言語化して最も伝えたいことの補足情報として準備する。
ただ、これもそんなに上手くやる必要はなくて、会話のその瞬間に伝えられなくても良い。補足情報は会話が終わった後に声をかけて伝えたり、 Slack で投げるのでも全く遅くははない。自分は「さっきのあの会話、やっちゃったな〜」という時には、後でショート 1on1 に誘って追加で説明したりもする。こういう振る舞いは、リモートワーク主体だとより必要になっていると思う。補足情報が抜け落ちやすい環境だからだ。たとえ顔が見えていたとしても、ビデオ会議で相手にとって十分な情報を伝えるのは相当難しい。とても面倒なんだけど、今はそういう時代なのである。
情報不足にチームで準備する
ちょっと話題が飛躍するかもしれないが、「会話は情報が不足する」という前提をチームや組織全体で事前に共有しておくのも大事で、勝手に話しかけにくい人を発生させない努力も必要である。補足情報となるドキュメントを事前にちゃんと書く、会議では相手にリスペクトを表現してから意見・質問をする。そういう当たり前だけど、ひとつひとつの振る舞いを超大事にするのがモダンなチームコミュニケーションなのである。
当たり前の振る舞いを高い水準でやろう、という空気を大事にすれば、リモートワークだって良い成果に導くことができるはずで、難しく解決しようとしてはいけない。こう考えると、「話しかけにくい人」は実はリモートワーク以前は「話しかけやすい人」だったかもしれない。環境変化によって単に情報が抜け落ちやすくなってしまっているだけ、という場合があるので、チームで向き合って改善してみるのも良さそうだ。
話しかけにくいコミュニケーション
もうひとつ別の観点で、話しかけにくいコミュニケーションの特徴もあると思う。それは、やりとり一回ずつのハードルを高くしすぎてしまうこと。
相手に最初からある程度完璧な情報伝達を求めてしまうと、間違ったことを言ってはいけない、情報が不足している状態では相談してはいけない、などハードルがどんどん上がっていってしまう傾向があるので気を付けておきたい 。
そして、そういう感情を周囲に抱かせないためには、日々、かなり柔らかくて品質がそれほど高くない状態から自分が成果をアウトプットし続けるスタイルに変えてみるのが効果があると思っている。思考や作業のプロセスを開示していく。そうすることで、発言の背景や感情の背景、つまり補足情報が周囲に自然と伝わり、解像度を高めやすくなる効果がある。
もし、自分が「話しかけにくい」とフィードバックを受けてしまった場合は、周囲の人たちが自分に対しての解像度を上げられるような振る舞いを意識していくと良いかもしれない。
また、「話しかけにくい」と思われている人が身近にいて困っていそうな場合、単にその感情だけにフォーカスされないように、周囲に対してその人の解像度を上げられるようなチームビルディングアクティビティを開催してみたり、「話しかけにくい」とされている人に情報提供を促してみたりすると良いかもしれない。